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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)693号 判決 1999年5月31日

原告

伊藤哲郎

外六名

右原告ら訴訟代理人弁護士

在間秀和

奥村秀二

被告

千里山生活協同組合

右代表者理事

渡会惠子

右訴訟代理人弁護士

巽貞男

中川元

主文

一  被告は、原告伊藤哲朗に対し、三九〇万八六〇八円及び別表一の1の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

二  被告は、原告鵜川賢治に対し、四七二万七九一六円及びうち別表一の2の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

三  被告は、原告阪口実に対し、五三八万一九三八円及びうち別表一の4の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

四  被告は、原告清水外美治に対し、四二二万一九九八円及びうち別表一の5の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

五  被告は、原告畑山清彦に対し、三七〇万二九二五円及びうち別表一の6の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

六  被告は、原告森脇保に対し、二三万〇二五九円及びうち別表一の7の認定未払時間外賃金欄各月記載の各金員に対するその該当月の各翌月二六日以降支払済みまで年五分の割合による金員、うち同表付加金欄の総合計欄記載の金員に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

七  原告川西恵の請求及びその余の原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

八  訴訟費用は、原告川西恵を除く原告らに生じたものの一〇分の九及び被告に生じたものの一〇分の八を被告の負担とし、右原告らに生じたものの一〇分の一及び被告に生じたものの一〇分の一を右原告らの負担とし、被告に生じたものの一〇分の一及び原告川西恵に生じたものの全部を同原告の負担とする。

九  この判決は、第一ないし第六項中、各原告について、別表一の付加金欄の金額の支払を命ずる部分を除き、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、原告伊藤哲朗に対し、四四八万一〇五七円及びうち別表一の1の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち六八万四二二〇円に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

二  被告は、原告鵜川賢治に対し、四七五万六五五二円及びうち別表一の2の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち六一万二九六一円に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

三  被告は、原告川西恵に対し、七万二四四四円及びうち別表一の3の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち一万二〇七四円に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

四  被告は、原告阪口実に対し、五四三万二二一〇円及びうち別表一の4の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち八三万六八〇九円に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

五  被告は、原告清水外美治に対し、四二二万六四四四円及びうち別表一の5の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち五五万七二五五円に対する本判決確定の翌日以降支払い済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

六  被告は、原告畑山清彦に対し、三七二万六二二一円及びうち別表一の6の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払済みまで年六分の割合による金員、うち五五万七一九三円に対する本判決確定の翌日以降支払い済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

七  被告は、原告森脇保に対し、三一万八〇一一円及びうち別表一の7の時間外未払賃金欄記載の各金員に対する同表の該当月の各翌日二六日以降支払い済みまで年六分の割合による金員、うち四万〇六一三円に対する本判決確定の翌日以降支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。

第二  事案の概要

本件は、被告の従業員である(もしくは従業員であった)原告らが、時間外労働もしくは休日労働に対する割増賃金及び付加金等の支払を求める事案である。

一  前提事実(いずれも当事者間に争いのない事実もしくは証拠〔甲第一、第二〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。)

1  当事者等

(一) 被告は、消費生活協同組合法に基づく消費生活協同組合であり、組合員の生活に必要な物資を購入し、これを組合員に供給することを主たる事業とする。被告は、大阪府吹田市、豊中市、箕面市等の北摂地域及び大阪市内の東淀川区、旭区等に在住する組合員約一万人で構成される。その従業員(以下「職員」という。)は、臨時職員を除き、約三五名である。

被告の施設としては、吹田市佐井寺の本部以外に、第一ないし第三支所、希望ケ丘センター(豊能町希望ケ丘)及び豊川倉庫がある。本部(千里店)と希望ケ丘センター(希望ケ丘店)に店舗を持ち、支所は配達部門のみで店舗はない。

組合員への生活物資の供給方法には、組合員の自宅等に直接配達する方法と、共同施設である店舗を設け、組合員の利用に任せる方法とがあるが、被告においては店舗が小規模であり、前者の方法が主流である。具体的には、組合員個人もしくは組合員数名以上のグループの注文を受けて、物資を組合員の自宅等に配達する供給方法を採っている。

(二) 原告らは被告の職員であり、各原告の採用年月日は次のとおりである。

なお、以下では、各原告はその氏のみで特定する。

原告伊藤 昭和六二年五月

原告鵜川 平成元年一〇月

原告川西 昭和六二年一一月

原告阪口 昭和六三年二月

原告清水 昭和四四年三月

原告畑山 昭和五七年一二月

原告森脇 平成三年二月

2  原告らの業務内容

(一) 原告伊藤

(1) 原告伊藤は、平成六年八月は第一支所に属しており、平成七年六月まで、同所の物流業務に従事し、同年七月から第二支所の共同購入部門において勤務した。

(2) 第一支所においては、午前中は、各業者から納品される商品を荷受けし、検品することから始まり、配達コースごとの仕分け、店舗への商品の転送作業を行う。午後も、各業者からの納入に始まり、午前中と同様の作業を行う。

納品する業者の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生することがある。

(3) 支所の共同購入部門の業務は次のとおりである。

配達業務は火曜日から金曜日まで、午前・午後の一日二回である。月曜日は配達はなく、組合員拡大業務、会議、研修などが行われる。

配達先は個人で異なり、高槻、茨木、摂津市は第二支所の者が担当し、右地域を除いた北摂(守口市、大阪市北部を含む)を第一支所の者が担当する。

職員は、出勤後、組合員に配布するカタログ及び配達する商品を倉庫から車に積み込む。商品を確認後、支所を出発し、配達先で組合員にカタログを渡して次の週の注文書を回収し、配達商品を車から降ろし、即売商品があればその場で販売を行う。一〇ないし二〇箇所を配達し、午前の配達が終了すると支所に戻るが、交通渋滞のために帰着が遅れ、午後の準備のために昼休みが取れず、車中で昼食をとることもある(頻度については当事者間に争いがある。)。

午後も午前中と同じく一〇ないし二〇箇所の配達を終えた後、支所へ戻ってコンテナの整理をする。午後の配達中に所定の終業時刻を超えることもあるが、支所に戻った後も、午前午後の注文書をチェックして注文をしていない組合員に電話で注文を聞いたり、即売した商品の伝票を切ったり、組合員からの問合わせに答えたり、、未入荷の商品を組合員に届けたり、翌日の配達の準備をする等、配達以外の業務をすることがある(頻度については当事者間に争いがある。)。

(二) 原告鵜川

原告鵜川は、豊川倉庫において物流業務に従事した。

豊川倉庫は、各業者から一括納品される商品を荷受け、検品、保管し、仕分けて支所に転送する機能を有する。職員は一名配置される他、パート職員(午前九時から午後三時までの勤務)が一名配置され、両者の共同作業となる。午後一一時から午後二時ころまでの間に、荷受け、仕分けの合間に、仕分けた商品を各支所に転送する業務も行う。また、第一支所物流業務の応援もする。

職員は、豊川倉庫に出勤後、第一支所に移動して物流業務の応援につき、その後豊川倉庫に戻って倉庫における業務に従事する。倉庫における業務の合間に、支所関連の業務にも従事する。

納品する業者の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生することがある。

(三) 原告川西

原告川西は、従来豊川倉庫において勤務していたが、平成六年四月店舗勤務を指示され、さらに同年一〇月第一支所勤務を指示されたが、いずれの指示にも従わず、引き続き豊川倉庫に出勤した。

(四) 原告阪口

原告阪口は、第一支所における共同購入部門において勤務した。その業務内容は、前述の(一)(3)記載のとおりである。

(五) 原告清水

原告清水は、平成六年九月まで管理部人事教育課兼物流管理課を兼務し、同年一〇月一日から平成七年五月まで名称を変更した管理部教育課に勤務し、同年六月以降は第一支所の共同購入部門において勤務した。

管理部門での勤務時間は、午前九時から午後五時三〇分であった。

(六) 原告畑山

原告畑山は、第一支所における共同購入部門において勤務した。その業務内容は、前述の(一)(3)記載のとおりである。

(七) 原告森脇

原告森脇は、第二支所における共同購入部門において勤務した。その業務内容は、前述の(一)(3)記載のとおりである。

3  労働時間等に関する就業規則の定め

被告の就業規則(千里山生活協同組合就業規則。以下、単に「就業規則」という。)における労働時間、休日の定めは次のとおりである。

(一) 労働時間

第三三条一項 職員の労働時間は次のとおりとする。

① 一年間の労働時間は、二〇一〇時間とする。

② 一日の労働時間は、七時間三〇分とする。

二項 所定始業終業時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。

① 始業時刻 午前九時

② 終業時刻 午後五時三〇分

③ 休憩時間 午前一二時から午後一時まで

第三五条 職員が出張、その他の事由により所属事業場外において勤務する場合は、予め別段の指示をした場合の他は所定就業時間勤務したものとみなす。

第三八条 組合は業務の都合により、四週間を通じて平均一週四六時間を超えない範囲で職員に第三三条と異なる勤務をさせることがある。

(二) 休日

第五〇条一項 休日は次のとおりとする。

① 日曜日

② 国民の祝日

③ 八月の盆休暇(日曜日を含む五連続日)

④ 年始(一月一日から五日、ただし年度により変更することがある)

二項 業務の都合により、前項第二号の休日は予め別途の日の設定し、振替休日とすることがある。振替休日指定日は、事業所ごとに別に定める。

4  被告職員の給与体系等

被告における給与体系、支払時期等は次のとおりである。

(一) 就業規則五五条の規定に基づいて定められる千里山生活協同組合職員給与規程(以下「給与規程」という。)には、次の規定がある。

第四条 賃金の体系は次のとおりとする。

基準内賃金 基本給 手当(役職手当、扶養手当、勤続手当、住宅手当、職務手当、食事手当、技能手当)

基準外賃金 手当(休日勤務手当、時間外勤務手当、食肉仕分手当、通勤手当)

第一二条 基準内賃金(基本給、役職手当、扶養手当、勤続手当、住宅手当、食事手当、職務手当、技能手当)は、月額により定める。

第一九条 勤続手当は勤続一年につき一〇〇〇円とする。ただし、勤続三年以上の者に支給する。

第二〇条 役職手当は、管理監督の地位にある職員に対して、次に掲げる区分により支給する。

① 部長職 月額六万円

② 次長職 月額四万五〇〇〇円

③ 課長職 月額四万円

④ 主任職 月額二万円

第二一条一項 職員に扶養家族がいるときは、次に掲げる区分により扶養手当を支給する。

① 配偶者 月額一万円

② その他 月額五〇〇〇円

二項 扶養家族とは、職員の収入によって生活を維持する六親等内の血族及び三親等内の姻族をいう。

三項 扶養手当は、扶養家族を持つに致った賃金計算月の翌月から、扶養家族でなくなった当月まで支給する。扶養家族の変更については、遅滞なく届け出なければならない。虚偽または届出を怠った者には、扶養手当を支給しない。

第二二条 住宅手当は、次の職員に対して支給する。

① 扶養家族を有する者で被扶養者と同居している者 月額二万円

② その他の者 月額一万円

第二三条 休日勤務手当は、休日に勤務することを命じ、その勤務に服した職員に支給する。勤務時間一時間につき一時間当たりの算定基礎額に一〇〇分の一二五を乗じて得た金額とする。この計算期間は、毎月二一日から翌月二〇日の分を翌々月二五日に支払う。ただし、第二〇条の①ないし③に該当する職員には支給しない。

第二四条 職員が上司の指示、承認により時間外勤務をした場合においては、勤務一時間につき一時間当たりの算定基礎額に一〇〇分の一二五を乗じて得た金額とする。ただし、この手当は第二〇乗により役職手当を支給されている職員には支給しない。

(二) 被告における時間外勤務手当は、毎月二〇日締めの翌月二五日払いである。原告森脇以外の原告らは、平成六年八月及び同月九月、被告から役職手当を支給された。

二  争点

1  原告らの時間外労働の有無

(一) 総論(タイムカードの記載が労働実態を反映しているか)

(二) 各論(各原告の労働者の実態)

2  被告において変形労働時間制が採られていたか

3  役職手当(後に業務手当、職務手当)が割増賃金といえるか

4  時間外手当の計算方法(給与規程二四条の解釈等)

(一) 時間外手当の対象に法内超勤も含むか

(二) 「算定基礎額」に基本給以外の手当を含むか

5  配達業務への就業規則三五条(事業場外労働のみなし)の適用の有無

6  原告らが時間外手当を放棄したか

三  各争点に関する当事者の主張

1  争点1(一)(タイムカードの記載)について

(一) 原告の主張

被告における職員の労働時間の管理は、パート職員、正職員を問わずタイムカードで行われており、原告らは、各人のタイムカード記載のとおり、平成六年九月(ただし、原告森脇については同年七月)以降、被告の指示に従って別表二ないし九記載のとおりの時間外労働もしくは休日労働(原告川西については休日労働のみ)を行ってきた。なお、原告森脇以外の原告らにつき、平成六年八月及び同年九月の時間外労働を除外しているのは、同人らが役職手当を支給されていたことによる。

原告らのタイムカードのうちには、タイムレコーダーによる打刻ではなく、手書きで記入されたものもあるが、豊川倉庫(物流部門)ではタイムレコーダーが設置されていないためであり、被告は、物流部門の職員に対しては手書きで記入するよう指示していた。そして、手書きで記入されたタイムカードは、毎月、各職員所属の管理職(部門長)が記載内容を確認して確認印を押していた。

(二) 被告の主張

被告においては、タイムカードは職員が出勤しているかを判定するためのものにすぎず、労働時間を管理するためのものではない。労働時間の管理は各職場に備え付けられた「申請書」によって行っていた。遅刻も厳格に規制していない。ただ、パートタイマーについてはタイムカードの記載によって賃金額を算定するため、正職員も打刻するに過ぎない。

平成六年一〇月までのもので、退勤時刻の記載のないものが多数ある。それより後のものでも記載漏れのあるものが多い。タイムレコーダーで打刻するべきものを手書き(しかも鉛筆書き)で記載されているものや、時刻も三〇分刻みで不自然なものが多数ある。被告における労働組合は、平成六年一二月二六日、二七日の両日、ストライキを実施したが、原告伊藤は右両日に、原告阪口は二六日にタイムカードを打刻しており、タイムカードが現実の労働時間を反映していないことを示すものである。

被告のタイムレコーダーの管理は次のとおり杜撰なものであり、上司に見つからずに打刻することも可能であった。

(1) 本部

建物内であるが、執務室外の階段の踊場に設置されて執務室から全く見えない。

(2) 第一支所(豊川倉庫勤務者のタイムレコーダーも第一支所に設置)

一階出入り口付近であり、二階にある執務室から全く見えない。

(3) 第二支所

建物二階執務室内に設置されているが、出入り口から入ってすぐの職員が行き交う場所で、上司の机から数メートル離れた柱に設置されている。第二支所には正社員が少なく、出払っている時間帯が多い。

2  争点1(二)(各原告らの労働実態)について

(一) 原告らの主張

原告らは、各人のタイムカード記載のとおり、平成六年九月(ただし、原告森脇については同年七月)以降、被告の指示に従って別表二ないし九記載のとおりの時間外労働もしくは休日労働を行ってきた。右別表中、「所定時間外労働」とは、時間外労働のうち、就業規則所定の七時間三〇分を超え、法定労働時間である八時間までの時間外労働時間の合計である。同じく別表中の「法定時間外労働」とは、労基法に定められている一日八時間を超える時間外労働の時間の合計である。

(1) 原告伊藤について(別表二)

平成七年六月までの第一支所の物流業務においては、納品する業者の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生するのはしばしばであった。

平成七年六月以降の第二支所の共同購入部門での業務では、配達に出発する前の商品等の車への積み込みでは、駐車場が狭く大変苦労する。午前の配達が終了すると支所に戻るが、交通渋滞のために帰着が遅れ、午後の準備のために昼休みを取れず、車中で昼食をとることも度々である。午後の配達を終えて支所に戻った後、車の掃除をすることもある。

(2) 原告鵜川について(別表三)

豊川倉庫においては、納品する業務の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生するのはしばしばであった。タイムカードは野路管理部長によって確認されていた。

(3) 原告川西について(別表四)

原告川西は、平成六年四月には店舗勤務、同年一〇月には第一支所勤務を命じられたが、被告の右配転命令が不当なものであるとして従前どおり豊川倉庫で就労してきた。被告は右労務提供を受領し、賃金の支払をしてきた。したがって、右就労から発生した休日勤務手当を支払う義務がある。原告川西は、平成六年九月二三日、同年一〇月一〇日及び同年一一月三日の三日間、いずれも祝祭日におけるイベントに関する業務を行った。

(4) 原告阪口について(別表五)

配達に出発する前の商品等の車への積み込みでは、駐車場が狭く、大変苦労する。午前の配達が終了すると支所に戻るが、交通渋滞のために帰着が遅れ、午後の準備のために昼休みを取れず、車中で昼食をとることも度々である。午後の配達を終えて支所に戻った後、車の掃除をすることもある。

(5) 原告清水について(別表六)

平成六年一〇月以降、原告清水は、本部に出勤してタイムカードを打刻して作業(組合員拡大業務)を行った後、第一支所ないしは豊川倉庫へ移動し、そこで教育指導業務、被告の再建案作成のための経営分析に当たっていた。教育指導の内容は、取扱商品の研究、若い職員の相談、通信教育・研修など、職員能力向上のための立案作成を行うことであった。右各業務のため、しばしば残業が発生した。

平成七年以降は、共同購入運営部門で、原告阪口((4))と同様である。

(6) 原告畑山について(別表七)

原告阪口((4))と同様である。分刻みで被告から配達先を指定されていた。

(7) 原告森脇について(別表八)

原告森脇は、平成六年九月末日まで第二支所において共同購入部門の配達業務に従事した。同年一〇月一日の機構改革以後も同人の所属に変更はなかったが、無効な配転命令によって配達業務から外されたため、伝票の整理や被告の組合員からの電話対応等に従事することになった。その後、被告の指示によって同月一七日から同年一一月五日まで、同年一二月一三日から同月二〇日まで再び配達業務に従事した。被告は右労務を受領し、賃金を支払ってきたのであるから、時間外手当も支払う義務がある。

(二) 被告の主張

仮にタイムカードが出勤・退勤時刻を反映したものであったとしても、原告らの右出勤・退勤時刻は被告の業務命令に基づくものではなく、原告らが任意に出勤又は退勤をしていたものであるから、時間外手当を請求する根拠となるものではない。原告らの担当業務は、所定労働時間内に処理されることを予定したものであり、現に定刻ぎりぎりの出勤でも配達業務等に支障を来したことはない。被告は、会議、研修、繁忙期の早出を除いて、職員に始業時刻前や終業時刻後の就労を命じたことはない。また、共同購入運営部門の配達業務に関しても、配達地域を特定し、運行しやすいルートを設定している。

(1) 原告伊藤について(別表二)

原告伊藤が平成六年九月から平成七年五月まで勤務していた第一支所の物流部門の勤務時間は、午前七時三〇分から午後五時までであり、午後五時以降の退勤時刻は本人の裁量に任せていた。納品の荷受、仕分け作業が業務内容であるが、業者の納品時刻は概ね商品別、業者別に決まっており、曜日ごとに業務内容はほぼ決まっている。右期間内、同人の出勤時刻が定時に遅れているものがみられるが、出勤時刻も融通を利かせて被告は遅刻扱いしていない。このように、タイムカードの打刻は、労働時間の管理の意味を有しない。

(2) 原告鵜川について(別表三)

原告鵜川は、物流部門に属し、豊川倉庫での勤務であった。同人は、一日の最初が豊川倉庫の解錠から始まり、荷受、仕分け作業をパートタイマーとともに行い、直ちに第一支所に行き、午前中仕分け、午後支所間の転送を受け持ち、退勤時刻に合わせて豊川倉庫に戻るというスケジュールであった。曜日ごとに業務内容は決まっており、所定労働時間内に終わるのを予定されているが、正職員は一名なので、労働時間に対する裁量権が与えられている。ところが、平成六年九月に労働組合が結成されて豊川倉庫を組合事務所として占拠してから、原告鵜川は組合活動に専従していた。別表三の平成六年九月二一日から翌日二〇日までの一か月間、退勤時刻が全く記載されていないのはそのためである。

退勤時刻は本人の裁量に任せていたが、組合活動のために滞留していたのであり、定刻前の時間外勤務は、業務命令に基づかない任意の出勤であり、時間外労働にあたらない。タイムカードもすべて手書きで記入されており、同じ時刻がほとんどであることからも、同人が恣意的に記入したものであることが示されている。

(3) 原告川西について(別表四)

原告川西は、平成六年四月以降は、店舗勤務を命じたにもかかわらず、豊川倉庫での勤務を宣言し、業務命令に従わず、さらに、同年一〇月一日の被告の機構改革にも異議を唱えて、第一支所勤務を命じたにもかかわらず従前どおり豊川倉庫に出勤しており、職務を放棄した。結局、同人は、同年四月一日から同年一二月二二日に懲戒解雇になるまで就労しなかったが、それにもかかわらずタイムカードに記載されている。

(4) 原告阪口について(別表五)

原告阪口は、第一支所の共同購入運営部門の業務を担当していた。同人の勤務時間は、午前九時から午後五時三〇分であったが、平成七年五月二二日から勤務時間が変更され、火曜日から金曜日までは午前八時三〇分から午後六時三〇分、月曜日及び土曜日は午前九時から午後五時三〇分までとなった。

(5) 原告清水について(別表六)

原告清水は、平成六年四月から管理部人事教育課(本部)勤務であり、同課は同年一〇月一日以降は、管理部教育課に名称変更された。当時の原告清水の勤務時間は、午前九時から午後五時三〇分であり、人事教育という業務の内容からして時間外勤務が発生する余地はない。右期間に同人が第一支所ないしは豊川倉庫へ移動していたのは、業務命令によるものではない。平成六年一〇月ころの労働組合結成後、同人は、毎日のように午後から職場を離脱して豊川倉庫に行っていた。

同人は、平成七年六月に第一支所の配達業務に異動になったが、退勤時刻は同人の裁量に任せていたのであるから、タイムカードの退勤時刻の記載は時間外勤務手当請求の根拠となるものではない。

(6) 原告畑山について(別表七)

原告畑山の所属は第一支所であり、共同購入運営部門の配達業務を担当していた。勤務時間は午前九時から午後五時三〇分である。

(7) 原告森脇について(別表八)

原告森脇の所属は、第二支所で、共同購入運営部門の配達業務担当である。勤務時間は午前九時から午後五時三〇分である。

同人は、平成六年一〇月一日の機構改革に反対して、職務を放棄した。一部の配達業務に従事しただけで、タイムカードを打刻するだけのために第二支所に来ていた。

3  争点2(変形労働時間制)について

(一) 被告の主張

被告は、共同購入運営部門及び物流部門の各事業所ごとに職員の勤務時間について、実質上、一か月もしくは一年間の変形労働時間制を採用している。

労働基準法(以下「労基法」という。)三二条の二所定の一か月単位の変形労働時間制を受け、被告は、従前より四週単位の変形労働時間制を採りうることを就業規則で定めている(三八条)。そして、共同購入運営部門や物流部門の業務は、曜日等によって変動が大きいため、右就業規則に基づき、これらの部門の職員については、部門別会議等の諸会合に諮った上で、勤務日程を、起算日を定めて一定期間分(一年間分等)を一括して予め設定する形にして各日、各週ごとの所定労働時間を特定した上で拘束時間を定めている。

仮に右事実が認められないとしても、被告は、その事業年度ごとに、事業計画とともに、一年間の職員の労働時間について部門長が部門別会議で執行部案を示して各職員の納得を得た上で「生協カレンダー」を策定してタイムスケジュールを組んでいるのであるから、一年間の変形労働時間制を採っているというべきである。例えば、共同購入運営部門の平成八年度の勤務日程についていえば、概ね毎週火曜日から金曜日までは拘束時間を九時間、月曜日は拘束時間を七時間とし、月曜日の出勤日を四週間あたり一回ないし二回休日とすることで設定期間である四週間を平均して、一週間あたり四〇時間以内になるように設定している。被告においては、一年間分を一括して設定することから、年間総労働時間と年間の週平均労働時間も、念のために表示している。

被告における勤務時間は次のとおりである。

(1) 一般及び管理部門

就業規則のとおり、午前九時から午後五時三〇分であり、休憩時間は、午前一二時から午後一時までの一時間である。

(2) 物流部門(変形労働時間制)

午前七時三〇分から午後五時まで。休憩時間は、午前一二時から午後一時、週休日(日曜日)の他、土曜日または月曜日を労働時間調整日として法定外休日とし、一週間四四時間以内とする。

(3) 共同購入部門(配達部門、事業所外勤務)

第一支所は、平成七年五月までは、(1)(一般及び管理部門)に同じであったが、同年六月以降、午前八時三〇分から午後六時三〇分、休憩時間が午後一二時から午後一時となった。

第二支所の勤務時間は、午前九時から午後七時までの九時間(休憩一時間)であった。ただし、月曜日は午前五時までの七時間である。

週休日(日曜日)の他、土曜日又は月曜日を労働時間調整日として法定外休日とし、一週間四四時間以内とする。

(二) 原告らの主張

就業規則三八条は、「四週間を通じて平均一週間四六時間を超えない範囲」と定めるが、本件の賃金対象期間である平成六年八月以降では、週の法定労働時間は四四時間に規制されており、右就業規則の規定は労基法に違反する無効なものである。

また、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に就業規則で定めることを要するところ(労基法三二条の二)、被告の就業規則三八条はそこまで具体的に定めていない。生協カレンダーは、原告ら職員の意見聴取もなく被告が一方的に定めたものであるから、「就業規則その他これに準ずるもの」に当たらないことは明らかである。

右生協カレンダーが新年度の開始前に原告らに示されたことがないという実態からも、そもそも就業規則三八条の定める四週間単位の変形労働時間制は被告において現実には運用されていないから、右主張は失当である。

4  焦点3(役職手当等)について

(一) 被告の主張

原告森脇以外の原告らは、平成六年九月まで役職手当の支給を受けており、時間外勤務手当の支給を受けていなかった(給与規程二四条但書)。被告においては、役職手当に時間外勤務手当を含んでいる。役職手当は、同年一〇月一日の機構改革によって役職の名称がなくなった後も、同手当に相当する金額は、「職務手当」としてそのまま既対象者の給与に含める取扱いが実施され、従来と同様、時間外勤務手当が支給されないことが引き継がれた。平成七年五月以降は、「職務手当」に代わるものとして、「業務手当」(一律に一万円)及び「調整手当」を支給してきた。

(二) 原告らの主張

前述のとおり、原告森脇以外の原告らにつき、平成六年八月及び同年九月の時間外勤務を除外しているのは、同人らが役職手当(給与規程四条但書)を支給されていたことによるが、原告らは、平成六年一〇月以降、機構改革によって役職を外されたのであるから、時間外手当の支給対象者であることは明らかであり、現に、平成九年八月以降、原告らは時間外勤務手当の支給を受けている。

5  争点4(一)(法内超勤)について

(一) 原告らの主張

各別表における「所定時間外」とは、一日の労働時間が就業規則所定の七時間三〇分を超え、労基法三二条二項の定める八時間までの時間外労働の時間である(就業規則三六条、三三条、給与規程二四条)。同じく「法定時間外」とは、労基法に定められている一日八時間を超える時間外労働の時間である。

原告らの時間外労働に対し、被告は、一時間あたりの算定基礎額に1.25を乗じた金額による時間外手当を各原告に支払うべき義務を負う(給与規程二四条)。そして、給与規程二四条には、単に「時間外勤務」と定められており、就業規則には七時間三〇分の所定労働時間が定められているのであるから、法内超勤に対しても時間外勤務手当を支払うという趣旨である。

(二) 被告の主張

原告らは、所定労働時間外労働(一日七時間三〇分を超えての法定内超勤)も含めて時間外手当を請求するが、被告の給与規程二四条が「職員が上司の指示、承認により時間外勤務をした場合」と定めているのは、法定外超勤(一日八時間を超えて勤務した場合)だけを対象としたものである。

6  争点4(二)(算定基礎額)について

(一) 原告らの主張

時間外割増賃金の算定の基礎となる額は、給与規程二四条「算定基礎額」に算入される手当が含まれ、給与規程四条に定める手当のうち、「役職手当」を除く「基準内賃金」のすべてを含む。なお、給与規程四条の基準内賃金のうち、「職務手当」は平成七年度の給与改訂時から「業務手当」に名称が変更された。また、原告らは「技能手当」は支給されていない。したがって、「時間外算入基礎額」は、「扶養手当、勤続手当、住宅手当、職務手当(業務手当)、食事手当」のすべてを意味する。

割増賃金算定の「時間外単価」は、各原告らの一年分の基準内賃金(基本給及び時間外算入基礎手当)の金額を、年間総労働時間である二〇一〇時間(就業規則三三条一項)で除したものである。また、「法定時間外割り増し額」は、原告らに支払われるべき時間外割増賃金(二割五分)と同額の付加金の支払を求める趣旨である。

(二) 被告の主張

「算定基礎額」に算入されるのは、基本給のみである。なお、労基法施行規則上も、「扶養手当」は時間外割増賃金の基礎となる賃金には算入されない(同規則二一条)。

時間外単価の算定についても、同規則一九条一項四号の算式と異なるものである。

7  争点5(事業場外労働のみなし)について

(一) 被告の主張

共同購入運営部門での業務は、ほとんどが事業所外での配達業務であり、その間の労働は所定労働時間を勤務したものとみなされ、帰着が勤務時間を超えたとしても、時間外勤務手当の対象となる労働とならない(就業規則三五条)。

(二) 原告らの主張

就業規則三五条は、出張等によって労働時間を被告が管理できない場合の規定であり、共同購入運営部門のように被告の事業所に出勤し、事業所から退勤する場合に適用されないことは明らかである。労基法三八条の二による「みなし労働」は、使用者の具体的な指揮監督が及ぶ場合には適用されないところ、被告は共同購入運用部門の業務内容をコース表で各配達場所及び配達時刻を詳細に指示しており、配達終了後は各支所に帰着させ、片付け等の業務に従事させているのであるから、みなし労働の適用はない。

8  争点6(時間外手当の放棄)について

(一) 被告の主張

被告においては、消費生活協同組合としての組織の性格上、理事(ほとんどが家庭の主婦である)や職員の一部の者が多くの報酬を支給されるのではなく、全く平等に支給されてきた。また、被告は、バブル期に多額の負債を抱えて再建中であるにもかかわらず、従前と同様の給与を支給している。

これらの報酬の支払方法は、職場における全体職場会議等の諸会合を通じて職員の総意でなされてきたのであるから、被告の従前の時間外勤務手当の不支給についても、職員全体の黙示の承認があるというべきである。

(二) 原告らの主張

仮に全職員が時間外手当てを支給しないことに対して黙示の承諾をしたとしても、労基法に違反する右承諾に効力はないし、既に発生した時間外手当ての放棄は、明示された意思表示によってなされない限り認められるべきではない。

第三  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(一)(タイムカードの記載)について

1(一)  甲第六、第七、第一一ないし第一七、乙第一ないし第二五の各一、二、第二六、第二七ないし第一三四の各一、二、第一四八、第一四九ないし第二四四の各一、二、証人肥後、原告畑山本人及び原告鵜川本人によれば、次の事実が認められる。

被告においては、昭和六〇年ころからタイムレコーダーを設置し、給与を時間給で支払われるパート職員やアルバイト職員も、月給制の正職員も、出勤時及び退勤時にタイムレコーダーによってタイムカードにその時刻を打刻することとされている。パート職員及びアルバイト職員の給与はタイムカードの記載によって計算され、正職員についても、皆勤手当ての支給の有無(遅刻、早退等の有無)をタイムカードの記載によって管理している。本件で原告らが時間外手当等を請求する平成六年以降は、本部、第一支所及び第二支所にはいずれもタイムレコーダーが設置されており、原告らも右の三箇所で勤務する者はタイムカードに打刻してきた。被告は、平成六年一一月二一日付で、部門長及び課長といった管理職に対し、職員のタイムカードに打刻漏れがあった場合の処置として、毎月二〇日に各部門及び各課単位で当該労働者の出勤・退勤時刻を確認したうえで手書きで記入させ、点検印を押印するように指示をした。第一支所においては、職員自身が打刻、記入しない場合でも、部門長が自ら職員の退勤時刻を把握した上で記入し、押印することもある。

豊川倉庫においては、タイムレコーダーが設置されていないため、そこに勤務する職員(原告鵜川)は、タイムカードの打刻に代えて、あらかじめ配布されたタイムカードに自ら出・退勤時刻を手書きで記入し、締め日である毎月二〇日ころに上司である部門長から確認印を貰うこととされていた。

(二)  右認定事実によれば、被告では、パート職員、正社員ともに労働時間の管理はタイムカードによって行っていたのであり、単に職員が出勤しているかどうかを管理するためだけにタイムレコーダーを設置していたとみるのは困難である。被告は、労働時間の管理は各職場に備え付けられた「申請書」によって行っていた旨主張するところ、甲第三の一ないし七、乙第二五六の一ないし四、証人肥後によれば、職員が提出する右申請書の記載が必ずしもタイムカードによって計算される時間外労働時間と一致しない部分があると認められるものの、原告畑山本人によれば、右不一致は被告において時間外労働に対する賃金の支払に制約を加えたことから生じたものと認められ、これをもってタイムカードが職員の労働時間を管理する機能を全く持たなかったとは言い難い。

2  被告は、タイムレコーダーの管理は杜撰なものであり、上司に見つからずに打刻することも可能であったから、タイムカードの記載は労働実態を反映しないと主張する。

この点、乙第一四四の一ないし六、第一四五の一ないし五、第一四六の一、二、第一四七の一ないし三、証人肥後、原告畑山本人、原告伊藤本人によれば、タイムレコーダーの設置場所は、本部が建物の階段踊場、第一支所が南側の一階入り口付近(当初の建物北側にある更衣室内から移動)、第二支所が二階事務所内の入り口の真正面であることが認められるが、右設置場所はいずれもある程度の人通りが予想される場所であるから、タイムレコーダーが管理職が常に監視しうる範囲の外に設置されていたことのみをもって直ちにその管理が杜撰であったとはいえないし、原告ら職員が日常において不正にタイムカードに打刻していたと認めるに足りる証拠はないから、被告の主張は採用できない。

タイムレコーダーは、その名義の本人が作動させた場合には、タイムカードに打刻された時刻にその職員が所在したといいうるのであり、通常、その記載が職員の出勤・退勤時刻を表示するものである。そこで、特段の事情がないかぎり、タイムカードの記載する時刻をもって出勤・退勤の時刻と推認することができるもので、本件においても、右設定のとおり、これによって労働時間の管理がされ、タイムレコーダーの管理も全く杜撰であったとはいえない以上は、個々の原告らについて特段の事情の有無を検討することになるものの、原則として、これによって時間外労働時間を算定するのが合理的である。もちろん、タイムカードの記載は、職員の出勤・退勤時刻を明らかにするもので、右時刻が、職員の就労の始期・終期と完全に一致するものではないが、前記認定のとおり、給与を時間給で支払われるパート職員も、月給制の正職員も、出勤時及び退勤時にタイムレコーダーによってタイムカードにその時刻を打刻することとされており、パート職員の給与はタイムカードの記載によって計算され、正社員についても、皆勤手当の支給の有無(遅刻、早退等の有無)をタイムカードの記載によって管理しているというのであるから、タイムカードを打刻すべき時刻について特段の取決めがなされたとの事情の窺えない本件においては、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻と就労の始期・終期との間に齟齬があることが証明されないかぎり、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって実労働時間を認定するべきである。

二  争点1(二)(各原告の労働の実態)について

1  各原告の労働実態

(一) 原告伊藤について

(1) 第一支所の物流業務(辞令上、平成七年六月まで)

甲第一一、乙第一の一、二、第八の一、二、第一五の一、二、第二二の一、二、第三一の一、二、第三九の一、二、第四三の一、二、第四八の一、二、第五三の一、二、第五八の一、二、第六三の一、二、第六九の一、二、第七四の一、二並びに原告伊藤本人によれば、次の事実が認められる。

第一支所の物流部門では、始業時刻が午前九時であるという就業規則の定めにもかかわらず、職員は午前八時から午後五時三〇分までの勤務を命じられていた。第一支所での物流業務の内容は、午前中は、各業者から納品される商品を荷受けし、検品することから始まり、配達コースごとの仕分け、店舗への商品の転送作業を行い、午後も、各業者からの納入に始まり、午前中と同様の作業を行うというものであり、納品する業者の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生することがあった。

商品の仕分け作業は配達の前日に終えるのが原則であるが、生鮮食料品は配達当日(深夜か早朝)の入荷もあり、その数量の点検、各支所への仕分け等の作業のため、午前八時より早く出勤することも多かった。当日の商品の仕分けが終わると、翌日配達の重量物(米、ビン類等)を中心とした商品の仕分けを行い、午前中の業務を終える。午後一二時から一時までは休憩時間とされていたが、現実にはその間も業者から商品の入荷があり、他の職員と交替で休憩を取るなどして対応していた。午後も、午前と同様の業務を行った後、通常は午後五時半ころにタイムカードを打刻して退勤していたが、商品の入荷が遅れるために仕分け作業が遅れることがしばしばあり、その他、業者からの納品書と被告の検品表の対照作業といった事務作業のため、指示されていた退勤時刻を超えて勤務することが常態化していた。原告伊藤は、平成七年六月に第二支所の共同購入運営部門への配転命令を受けるが、引継の関係で、現実に異動したのは同年八月二五日ころである。

右認定事実によれば、原告伊藤の第一支所の物流業務時代のタイムカードの記載と現実の労働実態が異なるものであることを窺わせる特段の事情はないというべきであるから、タイムカードの記載によって原告伊藤の労働時間を認定するべきである。

(2) 第二支所の共同購入運営部門(平成七年八月から)

甲第五、第一一、乙第七九の一、二、第八〇の一、二、第八五の一、二、第九〇の一、二、第九五の一、二、第一〇〇の一、二、第一〇五の一、二、第一一〇の一、二、第一一五の一、二、第一二〇の一、二、第一二五の一、二、第一三〇の一、二、第一四〇の一、二、第一五三の一、二、第一五八の一、二、第一六三の一、二、第一六七の一、二、第一七二の一、二、第一七七の一、二、第一八二の一、二、第一八七の一、二、第一九二の一、二、第一九七の一、二、第二〇二の一、二、第二〇七の一、二、第二一二の一、二、第二一六の一、二、第二二〇の一、二、第二二四の一、二、第二二八の一、二、第二三二の一、二、第二三六の一、二、第二四〇の一、二、第二四四の一、二並びに証人肥後及び原告伊藤本人によれば、次の事実が認められる。

第二支所の共同購入運営部門では、平成七年度以降、勤務時間は月曜日が午前九時から午後五時、火曜日から金曜日が午前九時から午後七時と就業規則と異なるものが被告から指示されていた。配達業務は火曜日から金曜日まで、午前・午後の一日二回であり、配達先は高槻、茨木、摂津市であった。所長を含む五名の職員で一コース当たり一〇ないし一五箇所を三〇ないし三五コースの配達業務を担当しており、月曜日は配達はなく、組合員拡大業務、会議、研修などが行われる。配達のある火曜日から金曜日は、職員は、出勤後、組合員に配布するカタログ及び配達する商品を倉庫から車に積み込み、商品を確認後、支所を出発し、配達先で組合員にカタログを渡して次の週の注文書を回収し、配達商品を車から降ろし、即売商品があればその場で販売を行う。一〇ないし二〇箇所を配達し、午前の配達が終了すると支所に戻るが、交通渋滞のために帰着が遅れ、午後の準備のために昼休みを取れず、車中で昼食をとることもある。午後も午前中と同じく一〇ないし二〇箇所の配達を終えた後、支所へ戻ってコンテナの整理をする。午後の配達中に所定の終業時刻を超えることもあるが、支所に戻った後も、午前午後の注文書をチェックして注文をしていない組合員に電話で注文を聞いたり、即売した商品の伝票を切ったり、組合員からの問い合わせに答えたり、定期の配達の後に入荷した商品を組合員に届けたり、翌日の配達の準備をする等、配達以外の業務をすることがある。配達が予定の時刻にできない場合、組合員から苦情が出されることがある。

原告伊藤は火曜日から金曜日まで、午前八時三〇分ころ出勤し、商品の車への積み込みを行って、午前一〇時ころに支所を出発し、予め曜日ごとに配達先、配達時刻が定められている配送コース表にしたがって配達業務を行っていた。原告伊藤が担当する配送コース表には、配達時刻が午後五時五五分、午後五時四〇分という配達箇所もあり、午後六時一五分ないし二〇分ころに支所に帰着後、残務整理によってすべての業務が終了するのが午後七時三〇分から午後八時ころになるのが常態化していた。

右認定事実によれば、原告伊藤の第二支所共同購入運営部門における配達業務は、終業時刻後の時間外勤務が常態化していたというべきである。他方、始業時刻(午前九時)より前の出勤について、原告伊藤本人は、配達の準備のために必要であった旨述べるものの、配達のために支所を出発する一時間三〇分も前から勤務を開始することを必要とする具体的な事情については明らかでなく、タイムカードに記載はあるものの、これを被告が指示ないし承認する時間外労働と認めることはできない。

(3) 右のとおり、原告伊藤の労働実態については、平成七年八月二五日ころまでの第一支所物流業務についてはタイムカードの記載により、別表九記載のとおりの労働時間を認定でき(原告伊藤主張の別表二とは一部に齟齬があるが、右齟齬はその主張からみて単なる誤記と認める。)、それより後の第二支所の共同購入運営部門での配達業務については始業時刻(午前九時)より前は労働実態があったとは認めがたいが、終業時刻後については、別表九(別表二との齟齬については、単なる誤記と認める。)のとおりの時間外勤務を認めることができる。

(二) 原告鵜川(豊川倉庫の物流業務)について

(1) 甲第一二、第二一の一ないし一四、乙第二の一、二、第九の一、二、第一六の一、二、第二三の一、二、第三二の一、二、第四四の一、二、第四九の一、二、第五四、第五九、第六四、第七〇、第七五、第八一、第八六の一、二、第九一の一、二、第九六の一、二、第一〇一の一、二、第一〇六の一、二、第一一一の一、二、第一一六の一、二、第一二一の一、二、第一二六の一、二、第一三一の一、二、第一五二の一、二、第一五七の一、二、第一六二の一、二、第一六六の一、二、第一七一の一、二、第一七六の一、二、第一八一の一、二、第一八六の一、二、第一九一の一、二、第一九六の一、二、第二〇一の一、二、第二〇六の一、二、第二一一の一、二、第二一五の一、二、第二一九の一、二、第二二三の一、二、第二二七の一、二、第二三一の一、二、第二三五の一、二、第二三九の一、二、第二四三の一、二並びに原告鵜川本人及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

豊川倉庫では、勤務時間は就業規則所定のものとは異なり、午前七時三〇分から午後五時までとされていた。豊川倉庫の物流業務は、各業者から一括納品される商品を荷受け、検品、保管し、仕分けて支所に転送するというものであり、職員は一名配置される他、パート職員(午前九時から午後三時までの勤務)が一名配置され、両者の共同作業となっていた。午前一一時から午後二時ころまでの間に、荷受け、仕分けの合間に、仕分けた商品を各支所に転送する業務も行う。原告鵜川は、火曜日及び金曜日は、豊川倉庫に入荷した常温商品(酒、洗剤、菓子、調味料等)を各支所及び店舗に転送する作業があり、火曜日は第一支所の業務の応援に行った後、午前九時ころ豊川倉庫に戻って右作業を行い、金曜日は第一支所に行かず、午前七時三〇分から転送のための作業を行っていた。倉庫における業務の合間に、支所関連総業務にも従事する。納品する業者の都合や、交通事情により納品が遅れたり、納入量の増加により仕分け作業が遅れ、時間外労働が発生することがある。

豊川倉庫にはタイムレコーダーが設置されていなかったため、原告鵜川は、自らの勤務開始と終了の時刻を毎日メモしておき、予め配布されていた白紙のタイムカードに一か月分をまとめて記入した上、上司の確認印を貰っていた。

(2) 右認定事実によれば、タイムカード(前掲乙号証)の記載は原告鵜川の労働実態を反映したものというべきであり、労働時間を右タイムカードによって認定することができる。被告は、原告鵜川のタイムカードがすべて手書きであり、出勤時刻等もほとんど同じであるから、労働実態を反映していないと主張するが、被告が物流部門では午前七時三〇分の始業を職員に指示していたことに照らして、原告鵜川の出勤・退勤時刻は不自然なものではない。また、被告は、平成六年九月に労働組合が結成されて豊川倉庫を組合事務所として占拠してから、原告鵜川は組合活動に専従していたと主張するが、原告鵜川の組合活動専従の事実はこれを認めるに足りる証拠がない。

したがって、原告鵜川の労働実態については、別表一〇(別表三との齟齬については、前同様、誤記と認める。)とおりであることが認められる。

(三) 原告川西について

乙第一四八、第二五五、証人肥後、原告畑山本人並びに弁論の全趣旨によれば、原告川西は、平成六年四月に、従前の豊川倉庫勤務から店舗勤務へ配転を指示され、また同年一〇月には第一支所への配転を命じられたにもかかわらず、それに従わず、組合活動のために豊川倉庫に出入りしていたこと、そして、右不就労(平成六年一〇月三日から同年一二月一九日まで)及び豊川倉庫の占拠(同年一一月一日から同年一二月一九日まで)を理由として被告から同年一二月二二日付けで懲戒解雇されたことが認められる。原告川西は、配転命令を拒否して豊川倉庫で就労してきたが、被告は、その労務提供を受領してきたので、その就労から発生した休日勤務手当を支払う義務があると主張する。しかしながら、配転命令に従わずに配転前の勤務場所に出勤し、その労務提供を被告がやむなく受領していたとしても、これによって配転命令が撤回されたわけではないし、その主張する休日勤務自体、配転命令に叛いたもので、しかも具体的にいかなる必要があって就労したかも疑問であり、原告川西が休日勤務をしたとしても、これをもって、被告が賃金を支払うべきものということはできない。

(四) 原告阪口について

(1) 甲第一五、第一六、乙第一八の一、二、第二七の一、二、第三四の一、二、第四〇の一、二、第四五の一、二、第五〇の一、二、第五五の一、二、第六〇の一、二、第六五の一、二、第七一の一、二、第七六の一、二、第八二の一、二、第八七の一、二、第九二の一、二、第九七の一、二、第一〇二の一、二、第一〇七の一、二、第一一二の一、二、第一一七の一、二、第一二二の一、二、第一二七の一、二、第一三二の一、二、第一三九、第一四〇の一、二、第一五〇の一、二、第一五五の一、二、第一六〇の一、二、第一六五の一、二、第一六九の一、二、第一七四の一、二、第一七九の一、二、第一八四の一、二、第一八九の一、二、第一九四の一、二、第一九九の一、二、第二〇四の一、二、第二〇九の一、二、第二一四の一、二、第二一八の一、二、第二二二の一、二、第二二六の一、二、第二三〇の一、二、第二三四の一、二、第二三八の一、二、第二四二の一、二並びに原告畑山本人によれば、次の事実が認められる。

原告阪口が担当した第一支所共同購入運営部門の業務内容は、配達担当地域が高槻、茨木、摂津市を除いた北摂(守口市、大阪市北部を含む)であることを除いて概ね第二支所の共同購入運営部門(原告伊藤の平成七年八月以降)と同じである。

第一支所の共同購入運営部門では、平成七年度以降、勤務時間は月曜日が午前九時から午後五時、火曜日から金曜日が午前八時三〇分から午後六時三〇分と被告から指示されていたが、これは就業規則における所定のもの(午前九時から午後五時三〇分)とは異なる。第一支所における配達業務は火曜日から金曜日まで、午前・午後の一日二回である。職員は、配達の前週に支所長が示す配達コース(出発時間、帰着時間が定められている)にしたがった配達をする。各職員の具体的な配達先の担当は、前任者から引き継ぐことになっており、各職員が任意に選択することはできない。月曜日は配達はなく、組合員拡大業務、会議、研修などが行われる。

配達業務のある日は、職員は、出勤後、組合員に配布するカタログ及び配達する商品を倉庫から車に積み込むが、積み込み作業には三〇ないし四〇分を要する。商品を確認後、支所を出発し、配達先で組合員にカタログを渡して次の週の注文書を回収し、配達商品を車から降ろし、即売商品があればその場で販売を行う。一〇ないし二〇箇所を配達し、午前の配達が終了すると支所に戻るが、交通渋滞のために帰着が遅れ、午後の準備のために昼休みを取れず、車中で昼食をとることもある。午後は、積み込み作業に三〇分ないし五〇分程度を要し、午前中と同じく一〇ないし二〇箇所の配達を終えた後、支所へ戻ってコンテナの整理をする。午後の配達中に所定の終業時刻を超えることもあるが、支所に戻った後も、午前午後の注文書をチェックして注文をしていない組合員に電話で注文を聞いたり、即売した商品の伝票を切ったり、組合員からの問い合わせに答えたり、未入荷だった商品を組合員に届けたり、翌日の配達の準備をする等、配達以外の業務をすることがある。

原告阪口の場合、月曜日は組合員拡大業務(ビラ配布、戸別訪問)、残務整理等を行うほか、各種会議へ出席していた。また、火曜日から金曜日までは、配達先に予定の時刻に到着するように早い曜日で午前七時二〇分ころ、遅い曜日でも午前八時一五分ころに出勤する。特に、火曜日及び金曜日は、午前の最終配達箇所と、午後の最初の配達箇所の配達時刻が接近しているため、午後に配達する商品の積み込み準備を午前中の出発前に済ませる必要があり、午前七時台に出勤していた。休日においても、会議や即売会のために被告に勤務を命じられることがあった。

(2) 右認定事実によれば、原告阪口の第一支所共同購入運営部門における業務は、終業時刻後の時間外勤務が常態化していたというべきである。また、始業時刻より前の勤務についても、予め支所長が決めた配達コース(出発時間、帰着時間が定められている)にしたがった配達業務を遂行するために必要なものであるといえるから、やはりタイムカードの記載どおりの労働実態が認められる。結局、原告阪口の労働実態については、タイムカード(前掲乙号証)の記載により、別表一一(別表五との齟齬については、単なる誤記と認める。)のとおりの時間外勤務を認めることができる。

(五) 原告清水について

(1) 管理部人事教育課時代(平成七年五月まで)

原告清水は、管理部人事教育課の時代にも残業が生じたと主張するが、同人の主張する具体的な業務内容は主張に大きな変遷がみられるだけでなく(平成一〇年一月二〇日付準備書面においては「作業」「教育指導業務」と主張し、平成一一年三月付準備書面においては「組合員拡大業務」「被告の再建案の作成」と主張する。甲一四の内容は、後者の主張に沿うものである。)、いかなる事情によって時間外労働が発生するのかはその具体的な業務内容からは必ずしも明らかとはいいがたい。また、乙第一九の一、二、第二八の一、二、第三五の一、二、第四一の一、二、第四六の一、二、第五一の一、二、第五六の一、二、第六一の一、二によれば、同人の平成六年一〇月から平成七年五月までのタイムカードは、退勤時刻の記載がなかったり、あっても手書きであり、時刻も同じものが多いことが認められる。

右各事実を総合すれば、タイムカードの記載が原告清水の管理部人事教育課における労働実態を反映していないことを窺わせる特段の事情があるというべきであり、タイムカードの記載によって同人の右期間における現実の労働時間を認定することはできない。その他に、右の点に関する原告清水の主張事実を認めるに足りる証拠はない。

(2) 第一支所共同購入運営部門(平成七年六月から)

甲第一四、乙第六六の一、二、第七二の一、二、第七七の一、二、第八三の一、二、第八八の一、二、第九三の一、二、第九八の一、二、第一〇三の一、二、第一〇八の一、二、第一一三の一、二、第一一八の一、二、第一二三の一、二、第一二八の一、二、第一三三の一、二、第一五一の一、二、第一五六の一、二、第一六一の一、二、第一七〇の一、二、第一七五の一、二、第一八〇の一、二、第一八五の一、二、第一九〇の一、二、第一九五の一、二、第二〇〇の一、二、並びに原告畑山本人によれば、原告清水の労働実態は次のようなものであったことが認められる。

原告清水の第一支所共同購入部門における業務内容及びその実態は、(四)において原告阪口について認定したものと、概ね同じであり、就業規則所定の出勤時刻前、退勤時刻後の時間外労働を余儀なくされていた。原告清水の場合、その他に、月曜日に配達部門の月次の売上を集計し、予算との対比をするという予算管理の作業を行っており、一か月当たり二ないし三時間を要していた。

(3) 右のとおりであるから、原告清水の労働実態は、管理部人事教育課時代についてはタイムカードの記載どおりの時間外労働を認定することはできないが、第一支所共同購入運営部門における業務は、終業時刻後の時間外勤務が常態化していたというべきであり、始業時刻より前の勤務についても、予め支所長が決めた配達コース(出発時間、帰着時間が定められている)にしたがった配達業務を遂行するために必要なものであるといえるから、タイムカードの記載どおりの労働実態が認められる。結局、原告清水の労働実態については、タイムカード(前掲乙号証)の記載により、別表一二(別表六との齟齬については、単なる誤記と認める。)のとおりの時間外勤務を認めることができる。

(六) 原告畑山について

(1) 甲第一五、第一六、乙第二〇の一、二、第二九の一、二、第三六の一、二、第四二の一、二、第四七の一、二、第五二の一、二、第五七の一、二、第六二の一、二、第六八の一、二、第七三の一、二、第七八の一、二、第八四の一、二、第八九の一、二、第九四の一、二、第九九の一、二、第一〇四の一、二、第一〇九の一、二、第一一四の一、二、第一一九の一、二、第一二四の一、二、第一二九の一、二、第一三四の一、二、第一四九の一、二、第一五四の一、二、第一五九の一、二、第一六八の一、二、第一七三の一、二、第一七八の一、二、第一八三の一、二、第一八八の一、二、第一九三の一、二、第一九八の一、二、第二〇三の一、二、第二〇八の一、二、第二一三の一、二、第二一七の一、二、第二二一の一、二、第一六四の一、二、第二二五の一、二、第二二九の一、二、第二三三の一、二、第二三七の一、二、第二四一の一、二並びに原告畑山本人によれば、次の事実が認められる。

原告畑山の第一支所共同購入部門における業務内容及びその実態は、(四)において原告阪口について認定したものと、概ね同じであり、就業規則所定の出勤時刻前、退勤時刻後の時間外労働を余儀なくされていた。原告畑山の場合、午前中の配達は午前九時ころに第一支所を出発し、吹田市内の配達を一〇ないし一五箇所まわり、支所に帰着するのが午前一一時四〇分ないし五〇分ころである。午後も一五ないし二〇箇所を配達し、曜日によって異なるが、概ね午後五時三〇分ころに最終の配達先に到着し、支所に戻ってくるのが午後六時前後である。その後、三〇分ないし四〇分程度かけてコンテナーや車両内のダンボールの整理をし、さらにその後、事務所で注文書の整理や組合員からの電話応対を行うため、特別な事情がなくても業務が終了するのは午後六時三〇分から午後七時ころになる。

(2) 右認定事実によれば、原告畑山の第一支所共同購入運営部門における業務は、終業時刻後の時間外勤務が常態化していたというべきであり、始業時刻より前の勤務についても、予め支所長が決めた配達コース(出発時間、帰着時間が定められている)にしたがった配達業務を遂行するために必要なものであるといえるから、タイムカードの記載どおりの労働実態が認められる。結局、原告清水の労働実態については、タイムカード(前掲乙号証)の記載により、別表一三(別表七との齟齬については、単なる誤記と認める。)のとおりの時間外勤務を認めることができる。

(七) 原告森脇について

(1) 甲第八ないし第一〇、第一七、乙第三八の一、二、第一三六、第一四八、第二五四並びに証人肥後及び原告森脇本人によれば、次の事実が認められる。

原告森脇は、平成六年九月末日まで第二支所共同購入運営部門の配達業務に従事していた。業務内容等については、概ね(一)において原告伊藤の労働実態について認定したとおりである。原告森脇の場合、火曜日及び水曜日の配達先が比較的第二支所に近いため、概ね午後五時ころには配達を終了し、午後五時三〇分ころには第二支所に帰着していたが、木曜日及び金曜日の配達先は比較的遠いため、午後五時三〇分過ぎに配達を終了し、第二支所に帰着するのは午後六時過ぎころであった。右帰着後も、コンテナやダンボール等の片づけ、車両の荷台の掃除、注文書の点検、組合員からの電話の応対、翌日の準備等の作業に一時間ないし二時間程度を要していた。

ところで、原告森脇は、被告による同年一〇月一日付けの第二支所第二課から同第三課への配転命令が、「再生会議」という人事権を有しない者の定めた職員体制と同じ内容のものであることを理由に辞令書を破り捨てて右配転命令を拒否した。それに対し、被告が自宅待機を命じると、原告森脇は、自宅待機命令について書面を要求し、右書面の交付がなければ右自宅待機命令に従えないとして、右命令を無視して、その後も第二支所に出勤した。原告森脇は、同年一〇月三日からも第二支所に出頭するものの、配達業務からは外れ、他の職員の商品の積み込みの応援、電話応対、伝票の起票等の作業を行った。また、原告森脇は、就業時間中に組合活動のために第二支所を離れて豊川倉庫へ行くことが少なくとも一週間に二、三回あった。

原告森脇は、同年一〇月一七日から同年一一月五日まで、第二支所長の立花の指示によって午後から配達業務に就いたが、同月七日から同年一二月一二日まで、また同月一六日は、再び配達業務から外れた。同月一三日から同月二〇日(一六日を除く)までは、再度配達業務の応援につき、毎日午後から配達業務を行った。被告は、平成六年一二月二二日付で、原告森脇を、同年一〇月三日から同月一五日まで、同年一一月七日から同年一二月九日までの期間の不就労及び同年一一月一日から同年一二月一九日までの豊川倉庫占拠による職場秩序の破壊を理由に懲戒解雇した。

(2) 右認定の事実によれば、原告森脇の労働実態については、平成六年九月末日まではタイムカードの記載どおりであるというべきであるが、同年一〇月以降は、同月一日から同月一四日まで、同年一一月七日から同年一二月一二日まで及び同年一二月一六日の就労の事実を認めることはできず、その余の日についても、配達業務に就いたのは午後からであるから、定刻前の就労の事実は認めることができない。したがって、乙第七の一、二、第一四の一、二、第二一の一、二、第三〇の一、二、第三七の一、二によれば、別表八の平成六年九月三〇日まではすべて、同日より後については、右就労の事実のある日についてのみ時間外労働があったと認められる。なお、原告森脇は、自分が配達業務を拒否したのではなく、被告が労務の受領を拒否した旨主張するようであるが、被告による配転命令を拒否するということは、配転後の第三課での就労を拒否することに他ならないから、原告森脇の右主張には理由がないというべきである。

2  各原告の労働実態は右のとおり認定できるところ、被告は、原告ら主張の労働実態があるとしても、原告らが任意に早出・残業をしていたのであるから時間外手当を請求する根拠とならないと主張する。しかし、前記認定のとおり、原告らの業務のうち、第一支所の物流業務、豊川倉庫における物流業務、各支所における共同購入運営部門の配達業務については、被告の指示による予定されていた業務量が終業時間内にこなすことができないほどのものであり、そのために右各業務を担当した原告らが時間外労働に従事せざるを得ない状況にあったのであるから、原告らが従事した時間外労働は、前記説示において除外したものを除き、いずれも少なくとも被告の黙示の業務命令によるものであるというべきであり、被告の右主張は採用することができない。

三  争点2(変形労働時間制)について

1  甲第一八の一ないし四、乙第一三九、一四〇の一、二、第一四一、第一四二、証人肥後、原告畑山本人、原告伊藤本人によれば次の事実が認められる。

被告は各支所ごとに労働日及び労働時間(始業時刻及び終業時刻)を各職員に提案して実施していたが、それは就業規則の変更や労働組合との交渉のもとに実施されていたものではなく、あくまで被告の提案にすぎなかった。また、職員の具体的な労働日を示した「生協カレンダー」は労働組合との協議はなく、部長会議や部課長会議で内容が決定されてい各職員に示されていたが、生協カレンダーには具体的な一日の労働時間は記載されておらず、事業年度の始め(毎年三月二一日)までに配布されたことはなく、平成九年度においては、一一月に至っても配布されていなかった。

2 一か月以内の変形労働時間制を実施するには、使用者は、就業規則その他これに準ずるものに変形期間、変形期間内における法定労働時間の総枠、法定労働時間を超える日、週を規定する必要があり(労基法三二条の二)、変形期間は、起算日を明らかにして特定しなければならないこととされている(労働基準規則一二条の二第一項)。

被告は、共同購入運営部門や物流部門の職員については、部門別会議等の諸会合に諮った上で、勤務日程を、起算日を定めて一定期間分(一年間分等)を一括して予め設定する形にして各日、各週ごとの所定労働時間を特定した上で拘束時間を定めていると主張するが、具体的に何が就業規則に準ずるものであるのか、具体的な変形期間(一か月以内でなければならない)、その起算日、右期間内における法定労働時間の総枠等についての規定について何ら具体的に主張・立証していないから、一か月以内の変形労働時間制の主張には理由がない。

3 被告は、その事業年度ごとに、事業計画とともに、一年間の職員の労働時間について部門長が部門別会議で執行部案を示して各職員の納得を得た上で「生協カレンダー」を策定してタイムスケジュールを組んでいるのであるから、一年間の変形労働時間制を採っているとも主張するが、一年単位の変形労働時間制を実施するには、使用者は労働組合等との間で書面による協定を締結する必要があるところ(労基法三二条の四)、右認定の各事実によれば、生協カレンダーが書面による労使協定であるとはいいがたい。したがって、被告が一年間の変形労働時間制を採用しているとの主張も理由がない。

四  争点3(役職手当)について

1  甲第二、第一九の一ないし三、乙第二五一、第二五二、証人肥後及び原告畑山本人によれば、平成六年九月までは課長等の役職に就いている職員について役職手当が支給されていたが、原告らは同年一〇月以降は役職を外れたため、役職手当の支給はなくなり、平成七年三月まで暫定的に従前の役職手当と同額の職務手当が支給されるようになったこと、同年四月からは、業務手当一万円と調整手当という形に変わったが、合計額としては従前の職務手当と同額が支給されていることが認められる。

2 被告は役職手当(職務手当、業務手当)が時間外手当を含むものであると主張するところ、役職手当等は時間外賃金以外のものを含むものであるが、時間外賃金を固定額で支払うこと自体は、その額が労基法所定の割増賃金額を超えるかぎり、これを違法とすることはできないものの、その場合でも、時間外割増賃金として労基法所定の額が支払われているか否かを判断できるように割増賃金部分が明確でなければならない。しかるに、本件では、右役職手当等のうち、いかなる部分が時間外割増賃金に該当するかを明らかにする証拠はないから、被告の右主張は採用できない。

五  争点4(一)(法内超勤)

被告の給与規程においては、前述(第二の一4)のとおり、単に時間外勤務について割増賃金を支払う旨規定するのみで、法内超勤と法外超勤とを特に区別して取り扱っていないのであるから、法内超勤についても時間外の割増賃金を支払うことが労働契約上合意されていると解するのが相当である。

以上によれば、原告伊藤、同鵜川、同阪口、同清水、同畑山及び森脇については、別表一の1ないし7の認定時間外時間欄記載のとおり、時間外労働時間を認めることができる。なお、端数に関する計算は、原告らの主張に従った。

六  争点4(二)(算定基礎額)

割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、一か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入されない(労働基準法三七条四項、労基法二一条)。これらは、提供する労務の質と無関係な個人の事情に着目した賃金であり、制限列挙と解される。そこで、賃金のうち、この除外賃金に当たること及び除外される金額については、使用者である被告が主張立証責任を負うというべきである。

被告は、算定基礎額は基本給のみであり、扶養手当等を除外するべきであると主張するところ、その主張する扶養手当については除外賃金とされる家族手当と考える余地はあるものの、職務手当、技能手当等はこれが除外賃金に該当するとはいい難い。そこで、被告としては、除外賃金に該当する扶養手当の額について、各原告ごとに具体的に主張立証しなければならないが、その主張はなく、これを明らかにする証拠もない。そうすると、仮に扶養手当が除外賃金に当たるとしても、結局、これを除外できず、原告の主張する基準内賃金のすべてに基づいて時間外手当の算定基礎額を求めることとなる。してみれば、原告伊藤、同鵜川、同阪口、同清水、同畑山及び森脇については、別表一の1ないし7の時間外単価欄記載のとおり、時間単価の額を認めることができる。

七  争点5(事業場外労働のみなし制)について

被告は、共同購入運営部門での業務が事業所外での配達業務であるから、その間の労働は所定労働時間を勤務したものとみなされ(就業規則三五条)、帰着時間を超えても時間外勤務手当の対象とならない旨主張する。しかし、みなし制をとれるのは、事業場外労働のうち、労働時間を算定しがたい場合に限られるのであり(労基法三八条の二)、前記認定のとおり、被告においては、共同購入部門の配達業務に従事する職員を含めて、その労働時間はタイムカードによって管理しているのであるから、労働時間を算定しがたい場合に当たらないことは明らかである。事業場外労働のみなし制が現実に労働時間が算定できるにもかかわらず、事業場外労働であるという理由だけで、所定労働時間しか労働しなかったこととみなされる制度でないことはいうまでもない。この点に関する被告の主張は理由がない。

八  争点6(時間外手当の放棄)について

被告の主張の趣旨は必ずしも明らかでないが、原告らと被告の間で予め時間外手当を支払わないとの合意があったという趣旨であれば、その様な合意は強行法規たる労基法三七条に違反する無効なものであるといわざるをえないし、既に発生した時間外手当を原告らが放棄したとの趣旨であれば、そのような事実を認めるに足りる証拠はなく、いずれにしても被告の右主張には理由がない。

別表

一の1 原告伊藤哲郎<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

272,870

0

0

0

272,870

0

0

0

242,870

99,685

16,312

115,998

0

99,685

242,870

74,311

11,237

85,548

0

74,311

242,870

76,123

11,237

87,361

0

76,123

242,870

99,685

17,400

117,085

17,037

114,910

242,870

79,748

11,962

91,711

12,325

93,886

242,870

48,936

6,162

55,099

6,162

55,099

252,870

75,484

11,323

86,806

11,323

86,806

252,870

98,129

16,229

114,358

16,229

114,358

257,950

65,450

8,855

74,305

8,855

74,305

258,950

61,839

8,116

69,955

8,116

69,955

258,950

42,514

5,411

47,925

5,411

47,925

258,950

112,083

18,552

130,634

16,619

119,040

258,950

129,475

22,417

151,892

19,711

135,659

258,950

108,218

18,552

126,770

16,619

115,175

258,950

154,597

27,054

181,651

22,417

151,892

258,950

114,015

19,711

133,726

16,233

112,856

258,950

119,813

20,484

140,297

15,846

112,469

258,950

106,285

18,165

124,451

15,073

105,899

258,950

102,421

17,392

119,813

14,300

101,261

258,950

108,218

18,552

126,770

16,233

110,923

264,150

98,563

16,164

114,728

14,193

100,929

265,150

83,107

13,851

96,958

11,872

85,085

小計

2,085,700

335,139

2,393,839

264,575

2,185,551

265,150

75,192

12,268

87,460

10,289

75,588

265,150

106,851

17,413

124,264

17,017

121,890

265,150

94,283

17,809

112,091

15,830

100,219

265,150

108,830

18,204

127,035

16,226

115,162

265,150

116,745

18,996

135,741

15,830

114,766

265,150

100,915

17,413

118,328

13,455

90,626

265,150

95,351

19,392

114,743

16,621

100,100

265,150

56,350

15,434

71,784

13,851

62,287

271,980

85,247

13,396

98,643

10,960

84,030

271,980

95,396

15,832

111,228

13,802

99,049

277,640

102,302

17,404

119,706

14,504

102,302

278,640

81,097

12,892

93,989

11,229

84,008

278,640

68,620

10,813

79,433

9,149

69,452

278,640

73,345

15,388

88,732

12,892

73,760

278,640

85,505

21,626

107,131

16,219

74,692

278,640

68,870

17,051

85,921

15,388

75,940

278,640

77,187

19,131

96,318

14,140

66,374

278,640

79,707

21,626

101,333

17,883

78,876

278,640

76,430

21,210

97,640

16,635

70,192

278,640

43,917

12,892

56,809

10,813

44,333

278,640

45,996

12,892

58,888

10,813

46,412

小計

1,738,137

349,081

2,087,218

293,547

1,750,057

総合計

3,796,837

684,220

4,481,057

558,122

3,908,608

別表

一の2 原告鵜川賢治<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

331,730

0

0

0

331,730

0

0

0

301,730

69,803

9,457

79,260

0

69,803

301,730

85,565

12,610

98,175

0

85,565

301,730

90,069

13,060

103,129

0

90,069

301,730

92,320

14,861

107,182

14,861

107,182

301,730

51,789

6,755

58,545

6,755

58,545

309,230

66,923

8,769

75,692

8,769

75,692

319,230

100,057

14,770

114,828

14,770

114,828

319,230

107,204

17,153

124,357

17,153

124,357

319,230

83,381

11,435

94,816

11,435

94,816

319,230

85,763

11,912

97,675

11,912

97,675

319,230

76,234

10,959

87,193

11,435

90,051

319,230

121,498

19,059

140,556

19,059

140,556

319,230

107,204

16,676

123,880

16,676

123,880

319,230

104,822

16,200

121,022

16,200

121,022

319,230

119,116

18,582

137,698

18,582

135,315

319,230

119,116

20,011

139,127

20,488

141,986

319,230

119,116

18,582

137,698

18,582

137,698

326,890

107,337

16,588

123,925

16,588

123,925

326,890

97,579

14,149

111,728

14,149

111,728

326,890

131,732

21,467

153,199

21,467

153,199

326,890

121,974

18,540

140,514

18,540

140,514

326,890

82,942

11,709

94,652

11,709

94,652

小計

2,141,544

323,305

2,464,849

289,131

2,433,058

326,890

70,745

9,758

80,503

9,758

80,503

326,890

114,655

17,655

132,220

17,564

132,220

326,890

121,974

20,004

141,978

20,004

141,978

326,890

117,095

17,564

134,659

17,564

134,659

326,890

100,019

14,637

114,655

14,637

114,655

326,890

104,898

16,588

121,486

16,588

121,486

326,890

95,140

13,661

108,801

13,661

108,801

334,720

82,431

11,490

93,921

11,490

93,921

344,180

71,918

8,733

80,651

8,733

80,651

344,180

115,583

17,466

133,049

17,466

133,049

344,180

82,192

10,274

92,466

10,274

92,466

344,180

71,918

9,247

81,165

9,247

81,165

344,180

84,761

12,329

97,090

12,329

97,090

344,180

97,603

13,870

111,473

13,870

111,473

344,180

110,446

16,952

127,398

16,952

127,398

344,180

89,898

11,815

101,713

11,815

101,713

344,180

92,466

13,356

105,823

13,356

105,823

344,180

113,014

17,980

130,994

17,980

130,994

344,180

120,720

18,493

139,213

18,493

139,213

352,230

70,972

8,937

79,909

9,463

83,063

352,230

73,600

8,937

82,537

8,937

82,537

小計

2,002,047

289,656

2,291,703

290,181

2,294,858

総合計

4,143,591

612,961

4,756,552

579,312

4,727,916

別表

一の3 原告川西恵<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外

割増し額

(円)

合計(円)

391,720

0

0

0

391,720

0

0

0

351,720

39,372

7,874

47,246

351,720

20,998

4,200

25,198

小計

60,370

12,074

72,444

別表

一の4 原告坂口実<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

282,920

0

0

0

282,920

0

0

0

252,920

84,936

13,967

98,903

0

84,936

252,920

107,585

17,742

125,328

0

107,585

252,920

105,698

17,365

123,063

0

105,698

252,020

88,395

15,422

103,817

15,046

101,560

257,870

38,488

4,234

42,722

4,234

42,722

258,870

36,705

3,864

40,569

3,864

40,569

268,870

80,260

11,638

91,897

11,638

91,897

268,870

116,377

19,664

136,040

19,664

136,040

268,870

54,175

6,822

60,997

6,822

60,997

268,870

108,351

17,256

125,606

17,657

128,014

268,870

78,253

12,842

91,095

12,842

91,095

268,870

130,422

21,670

152,092

22,071

154,500

268,870

158,513

27,690

186,203

27,690

186,203

268,870

148,480

26,084

174,565

26,084

174,565

268,870

192,623

34,512

227,135

34,512

227,135

268,870

108,351

18,460

126,810

17,256

119,587

273,950

134,931

23,306

158,237

23,306

158,237

274,950

133,371

22,981

156,352

22,981

156,352

274,950

112,853

18,877

131,730

18,877

131,730

274,950

149,786

26,264

176,050

26,264

176,050

274,950

135,423

22,571

157,994

22,571

157,994

274,950

139,527

23,391

162,918

23,391

162,918

小計

2,443,503

406,620

2,850,123

356,768

2,796,384

274,950

73,867

12,311

86,178

12,311

86,178

274,950

131,319

21,750

153,069

21,750

153,069

274,950

125,164

21,750

146,914

21,750

146,914

274,950

162,097

27,905

190,003

27,905

190,003

274,950

144,080

25,443

169,523

25,443

169,523

274,950

98,939

17,646

116,585

17,646

116,585

280,150

112,528

25,924

138,453

25,924

138,453

281,150

117,496

19,722

137,218

19,722

137,218

287,980

103,157

16,763

119,920

16,763

119,920

287,980

135,394

22,781

158,174

22,351

155,595

287,980

131,095

21,061

152,157

21,061

152,157

287,980

122,499

20,202

142,701

20,202

142,701

287,980

41,177

13,324

54,501

13,324

54,501

287,980

84,425

19,772

104,197

19,772

104,197

287,980

88,457

21,491

109,948

21,491

109,948

287,980

101,352

23,210

124,562

23,210

124,562

287,980

94,904

22,351

117,255

22,351

117,255

287,980

76,213

23,210

99,424

23,210

99,424

293,640

91,628

23,228

114,857

23,228

114,857

294,640

53,230

14,072

67,302

14,072

71,700

294,640

61,885

16,271

78,156

16,711

80,795

小計

2,150,908

430,189

2,581,097

430,199

2,585,554

総合計

4,594,411

836,809

5,431,220

786,967

5,381,938

別表

一の5 原告清水外美治<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

455,060

0

0

0

455,060

0

0

0

410,060

21,421

612

22,033

612

22,033

410,060

140,767

22,033

162,800

22,033

162,800

410,060

82,624

9,792

92,417

9,792

92,417

410,060

91,804

13,465

105,269

13,465

105,269

410,060

58,143

5,508

63,651

5,508

63,651

410,060

64,263

6,732

70,995

6,732

70,995

420,060

72,100

7,523

79,623

7,523

79,623

420,060

131,661

20,690

152,350

20,690

152,350

420,060

47,022

4,389

51,410

4,389

51,410

420,060

87,774

11,912

99,686

11,912

99,686

429,020

67,234

9,605

76,839

8,965

72,997

429,020

108,856

15,368

124,224

15,368

124,224

429,020

83,243

10,886

94,128

10,886

94,128

429,020

144,074

23,692

167,766

23,692

167,766

429,020

179,292

30,095

209,387

30,095

209,387

429,020

118,461

19,210

137,671

19,210

137,671

429,020

89,646

12,807

102,453

12,807

102,453

429,020

124,864

19,850

144,714

19,850

144,714

429,020

105,654

15,368

121,022

15,368

121,022

429,020

153,679

25,613

179,292

25,613

179,292

429,020

169,687

26,894

196,581

26,864

196,581

429,020

153,679

24,332

178,011

24,332

178,011

小計

2,295,947

336,377

2,632,323

335,736

2,628,481

438,200

88,294

13,735

102,029

13,735

102,029

438,200

143,887

22,237

166,124

22,891

170,048

438,200

114,455

17,659

132,114

16,351

124,266

438,200

163,507

26,161

189,669

26,161

189,669

438,200

170,048

27,469

197,517

27,469

197,517

438,200

163,507

28,123

191,631

28,123

191,631

438,200

173,318

28,777

202,095

28,777

202,095

438,200

153,697

25,507

179,204

25,507

179,204

444,900

122,846

18,593

141,438

18,593

141,438

444,900

79,684

12,617

92,300

12,617

95,620

小計

1,373,243

220,878

1,594,121

220,224

1,593,517

総合計

3,669,190

557,255

4,226,444

555,960

4,221,998

別表

一の6 原告畑田清彦<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

303,150

0

0

0

313,1500

0

0

0

263,150

29,457

3,928

33,385

0

31,421

263,150

74,625

11,783

86,407

0

74,625

264,150

63,081

8,674

71,754

0

63,081

264,150

90,678

15,770

106,449

15,770

106,449

269,480

38,210

4,022

42,232

4,022

42,232

269,480

28,155

2,413

30,568

2,413

30,568

279,480

56,313

7,091

63,404

7,091

63,404

279,480

81,341

13,348

94,689

13,348

94,689

279,480

33,371

2,920

36,291

2,920

36,291

279,480

54,227

7,091

63,319

7,091

61,319

279,480

54,227

7,926

62,153

7,926

62,153

279,480

89,684

14,183

103,866

14,183

103,866

279,480

91,770

14,600

106,369

14,600

106,369

279,480

106,369

18,354

124,723

18,354

124,723

280,480

136,054

23,443

159,497

24,699

169,032

280,480

73,260

11,722

84,981

11,722

84,981

285,950

74,688

11,097

85,785

11,097

85,785

285,950

83,224

13,657

96,882

13,657

96,882

285,950

78,956

11,950

90,906

11,950

90,906

285,950

87,492

14,084

101,576

14,084

101,576

285,950

89,626

13,657

103,283

13,657

103,283

285,950

87,492

13,657

101,149

13,657

101,149

小計

1,602,301

245,369

1,847,670

222,241

1,832,785

285,950

59,751

8,963

68,713

8,963

68,713

285,950

102,430

16,218

118,648

15,364

113,526

285,950

98,162

16,218

114,380

16,218

114,380

285,950

110,966

18,352

129,318

18,779

131,878

286,950

92,081

14,562

106,643

14,562

106,643

286,950

104,929

17,988

122,917

17,988

122,917

292,550

98,244

15,719

113,964

15,719

113,964

292,550

98,244

16,592

114,837

16,156

112,217

300,490

76,244

11,212

87,456

11,661

90,147

300,490

96,426

15,697

112,123

15,697

112,123

300,490

89,699

13,455

103,153

13,455

103,153

300,490

74,001

11,212

85,214

11,212

85,214

300,490

18,224

8,970

27,194

9,418

32,127

300,490

49,142

13,006

62,148

13,006

62,148

300,490

72,043

19,285

91,328

19,285

91,328

300,490

63,073

16,146

79,219

16,146

79,219

301,490

58,917

15,749

74,666

15,749

74,666

301,490

64,182

21,149

85,331

19,799

77,232

307,680

78,742

20,206

98,948

19,747

96,193

307,680

30,100

10,562

40,662

10,562

40,662

307,680

31,127

10,562

41,689

10,562

41,689

小計

1,566,726

311,824

1,878,551

310,049

1,870,140

総合計

3,169,027

557,193

3,726,221

532,290

3,702,925

別表

一の7 原告森脇保<抄>

基準内賃金

時間外

未払賃金

(円)

法定時間外割増し額

(円)

請求合計

(円)

付加金(円)

認容額(円)

242,950

36,261

5,077

41,338

5,077

41,338

242,950

79,775

12,691

92,466

12,691

92,466

242,950

56,205

8,703

64,908

5,802

42,063

242,950

50,766

6,890

57,655

5,802

42,063

242,950

54,392

7,252

61,644

1,450

12,329

小計

277,398

40,613

318,011

30,822

230,259

九  遅延損害金の利率について

原告らは、未払賃金に対する遅延損害金として、各支払日から支払済みまで年六分の割合による金員の支払を求めるが、被告に対する賃金請求権が商事債権であることを示す事実について何ら主張、立証がないから、民法所定の年五分の割合の限度で認容するべきである。

一〇  付加金について

原告川西を除く原告らは、以上のとおりの時間外労働に対する未払賃金請求権を有しており、右未払は労基法三七条に違反するものであるが、これに関する被告の態度等、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、未払賃金に対する付加金の請求は相当と認められる。そして、付加金の請求は、使用者による違反のあった時から二年以内にしなければならないものとされ(労基法一一四条)、右期間は除斥期間と解されるから、原告らが支払を求める付加金のうち、本件訴訟提起(記録上、平成九年一月二八日であることが明らかである。)から二年より前に支払期のある賃金(平成七年一月二五日が支払期である平成六年一二月分まで)に対する部分については権利行使をすることはできない。

よって、被告に対し、別表一の1ないし7の付加金欄の総合計欄に記載の各金員について原告らの主張する割合の範囲の額及びこれに対する本判決確定日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を命じることとする。

第四  結論

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官松本哲泓 裁判官和田健 裁判官谷口安史は、転補につき、署名押印することができない。裁判長裁判官松本哲泓)

別表二〜七<省略>

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